㉓ 天武天皇のあとを継いた妻
大海人皇子(天武天皇)は庶民生活になじみがあり、女好きの博打好きで天文遁甲に秀でていたうえ槍の使い手だったと記録されます。
私は大海皇子の父が舒明天皇ではなく用明王家の血を引く高向王だったと推測していますが、乙巳の変後、用明王家の生き残りは命を狙われるということで、母(斉明女帝)の庇護で東国で隠遁していたと推測します。
なにしろこの時期の中国では、皇帝の妻が皇室を事実上乗っ取るという異常事態になっていましたから、実力のある家柄を出身とする女性を妻にしない方が得策と考えたかもしれません。
実家のためのスパイだったはずが、皮肉にも壬申の乱では、実家を打倒する夫を陰から支える結果となってしまいました。
だからといって彼女は天武王朝の永続を望んでいたわけではなかったのです。
今後続いてゆく天皇家の始祖は夫でいいのか。いや、二つの王家の因縁の争いを終わらせるためには自分が天皇家の血統の原点となるべきだ。そのためにはどうにかして夫の家系から権力を奪わなければならない。
彼女がこんなだいそれたことを考えたのには、唐王朝の乗っ取りに成功した、ある女性の影響もあったと思うのです。