㉗ 神話と天皇 ~ アマテラスとスサノオの関係

天照大神は皇室の祖先神として最も重要な存在として伊勢神宮で祀られていますが、夫がないと子孫が生まれません。

では夫は誰かというと、須佐之男命という神ということになります。

 日本書紀が語る神話の世界において、皇室の祖先神として女神を崇める一方で、夫である須佐之男命を軽視するのはなぜか。

 天皇家は「男系男子」が基本原則なのですから常識的に考えれば祖先神も男性であるはず。 しかし、神話における創始者は女神であり、その夫は罪人として追放されるのです。

 結論を言えば、日本書紀の国生み神話は、持統天皇と天武天皇の政治的関係を神話で表現する試みでした。

 持統天皇が夫より格上であることを正当化するために天照女神を高天原の高貴な支配者とし、夫の須佐之男命をヤンチャで迷惑だから高天原から追放された神と設定したのです。

 つまり神話における天照女神は持統天皇であり須佐之男命は天武天皇なのです。

 天武天皇の子孫には持統天皇と血縁関係のない皇族がたくさんいましたが、持統王朝の血統原理にとって邪魔になる長屋王のような危険な存在は無実の罪を着せられ抹殺されました。

 国譲り神話では、天照大神が出雲に建御雷神(タケミカヅチ)を派遣し、大国主に国を譲らせます。

 大国主は須佐之男命の子孫であり、建御雷神は藤原氏(中臣氏)の祖先神です。つまり、持統女帝が藤原に命じて、天武の子孫である大国主命(長屋王)から国を奪ったという構図です。

 このような事情により、伊勢神宮では天照女神をこの世の支配者として祀り、出雲大社では天武帝の子孫である大国主命を黄泉の国の支配者として祀りました。 なお、出雲大社の主祭神は現在では大国主命とされていますが、ある時期までは須佐之男命が祀られていたという説があります。

 こうして秘密のシナリオを神話を通じて徐々に世間に認識させることに成功し、いつの間にか、日本書紀に書いてあることが歴史的事実であるかのように信じさせることに成功しました。

 ようやく<この国のかたち>が見えてきました。


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