日本と天皇のはじまりについて思う


  国家を守るために命をかけて戦う人たちがいます。だとしたら「国家とはなにか」というテーマは人にとって重要です。「国家は命より重いもの」かもしれないから。では、日本という国家についてはどうでしょう。

 特に私が気にしているのは、<日本の国家元首は誰か?>ということを、日本人はどんなふうに考えているのか。

 ウクライナ共和国であれば大統領が元首だが、ウクライナ国民は元首のために戦うのではなく国家のために戦う。

 だから、元首が誰であろうとたいしたことではない。

 私もそう思っていました。それでも今、このことを気にしていることには理由があります。しかし、その理由はあえて後にゆずりながら、あなたに聞いてみたいのです。

 日本の国家元首は誰?

 「the head of state」 国家の頭。つまり「元首」は国家権力の核となる存在ですが、多くの日本人は日本の元首を総理大臣だと言います。

 では、総理大臣を任命するのは誰か。日本国憲法によれば、国会の議決にもとづいて指名され、指名された者を天皇が総理大臣に任命します。

 「指名」とは「この人です。」と指さすだけのこと。任命は「職務を任せる」ということです。

 つまり、総理大臣の職務は、天皇が総理大臣に任せている。言い換えれば、総理大臣の職務は本来、天皇が行うべきものだということです。

 <天皇に職務を任せている存在が国民だ>という論理であったとしても、「特定の誰か」が天皇に任せているわけではない。つまり、日本の国家元首は天皇なのです。ここで「大臣」という言葉を思い返してください。

 「大臣」と言えばどこの国でも国王の臣下です。つまり、国王の職務を補佐するのが大臣であり、それら大臣の職務を総理する者を総理大臣と呼びます。つまり、大臣が元首であるということは原則としてありえません。一方で「大統領(president)」は元首から任命されるのではなく、もっぱら選挙によって国民から選ばれる国家元首です。

 日本の国家元首は天皇であり、日本国憲法の第一条にはこう書いてあります。


第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。


 私が公民の授業か何かでこのことを初めて耳にしたとき、私の心には違和感がありました。

 一言で言えば、「天皇がいなくても日本は日本だ。」という意味の、支配者に対抗する反発心のようなものがあったのです。

 そんな違和感を持ったまま日本という国家の歴史を考えているうちに、不思議に思うことを見つけました。

 天皇=日本国の象徴 だとすると、天皇と日本は一体不可分のものなのか? いや、それは過去の支配者の都合でたまたまそういう物語になったのだ。しかし果たしてそうか。

 日本という国家はいつから、どのようにはじまったのかを私は知らないのに、決めつけてはいけない。ここで世界史の歴史年表を眺めると、無数の王朝の存続期間が鮮やかな色どりで表現されているが、日本のところだけ、細く、長い・・・。

 日本の始まりはいつかなのか? 私がたまたま見た年表では古墳時代の300年から始まっていました。では、誰がどのようにして作ったのかを日本史の教科書で見てみる。<もくじ>の最初の方に「国家の誕生」という項目があるはずだ・・・

 ところが目次にはそれがない。では国家誕生の歴史はどこか。

 探しましたが、具体的な記述がないのです。弥生時代には漢の皇帝から金印をもらった「奴国王」がいたらしく、その後、邪馬台国という国があったらしく、その後古墳時代になると「ヤマト政権」があったらしく、その後、律令国家へと成長していった。

 で、「日本」という国家はいつ成立したのか。奈良時代の頃には日本という言葉が使われていたことはわかった。それだけだ。では外国の国家はどうなのか。

 イギリスの場合は9世紀にエセックス王エグバートによるイングランド統治からイングランドという王国が始まるといいます。

 フランスの場合は、6世紀のフランク王国からフランス王国に続き、革命によって王朝が倒れた後、共和制国家がいくつも出現して現代にいたっています。

 ほかの欧米諸国も似たり寄ったりで、現存する国家の成立過程はおおよそ解明されているが、日本ではそうではない。

 「日本」または「天皇」が邪馬台国の時代に存在したという証拠はなく、古墳時代においてもない。しかし奈良時代にはあった。この間に何があったのかよくわからない。

 「日本がいつどのように始まろうとどうでもいいことじゃないか。」

と、あなたは思うかもしれません。では、ある日この日本が外国から侵略を受けたとき、あなたがその始まりを知らない日本のために誰かが戦うこと、または自分や自分の家族が戦って死ぬことを想像してみたらどうでしょう。

 いま目の前にあるものが大事だから、それを守れればそれでもいい。しかし、「今」は「過去」がつくったものです。あなたが価値あると思っているものは、過去とつながっている。

 かつて、歴史が嫌いだと言う少年に質問したことがあります。

「自分の記憶が全部なくなったらどうなる?」と。

 彼はしばらく考えてからこう答えました。

「自分でなくなる。」

 日本の記憶がないということは、「日本でなくなる」ということでもあるのです。つまり日本を守るうえで歴史は重要です。その歴史の始まりが我々の記憶から欠けている。しかし、真実は一つ、かならずある。

 この国の価値とは、なんでしょう。実はあなたが今想像している以上に重大な歴史がこの「日本」の成立過程にはあったかもしれない。

 そのことが無視されていることを私は不思議かつ残念に思い、そして日本がどのように生まれたかということがとても気になってきました。でも私は学者でもなく専門家でもない。だから、教科書や書店で売っている書籍やインターネットの情報、そして自分の想像力に頼るしかありませんでした

 しかし、私は日本と天皇の成立過程を私なりに、まだぼやけた画像ではありますが、そこに重大な価値があると感じ取れる程度の画素数で復元できました。それを知らないことが日本人にとって、とてももったいないことだと、今は思っています。

 私はこれから、私がたどった思考の道筋をご案内できるようになりたいと思います。

2022年3月


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