③ オレ、東の天子

 天空の中でもっとも偉い星とは?

太陽ではありません。太陽は天空に一つしかないのです。「日」は弟なのですね。

さて、倭王(聖徳太子)は中国の皇帝に何を言いたかったのか。

夜空の星々は動いているが、星々の軌道の真ん中にあって動かない星がある。それを北極星といいます。つまり、星々は北極星を中心に回っているように見えます。

北極星は常に動かず、天空の中心にいる。だから皇帝をこの世界の中心とみなす中華思想において、北極星は皇帝権力の象徴なのです。そして倭王は「天が兄」である。つまり、中華秩序を尊重することを一応認めています。

しかし「倭王は日が上るまでに仕事を辞めるんです。」

これはある天体を意味しています。知らない人はいない、あの星。明け方に見えて、日が出ると消える「明星」。つまり金星。

金星は惑星だから北極星を中心とした軌道を取りません。倭王は金星である。だから皇帝の周りを規則正しく動いたりしない。

皇帝の顔を立ててお付き合いはするけど、倭国は独自の道を行くからね。

でも、隋帝国が本気が怒ると怖いから、公式伝達を避けてトンチにして中国側の反応を試したのだと私は推理します。それに気づいた皇帝は、「そんな主張は認めないぞ」という意味で「改めろ」とトンチに応じたのです。

で、それに対して倭王はどう反応したか。倭王はこんな手紙を皇帝に送りました。


日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無しや、云々


これをラップ調で現代語訳してみます。


オレ、東の天子。お前、西の天子。

メール送るぜ、最近元気かい~♪


これを読んだ皇帝はどんな気分だったでしょう。私だったら、こう思いますね。


「コイツ、いつかぶっ潰す。」


聖徳太子の外交手腕がうかがえます。そして、この外交方針はこのあとの倭国の運命に重大な影響を及ぼすことになるのです。


前の記事 次の記事

このブログの人気の投稿

善光寺の謎 7世紀の謎を解くカギとなる斉明天皇の秘密

㉗ 神話と天皇 ~ アマテラスとスサノオの関係

㉒ 天武王朝の開始